この文書は JIS X 0213 第 4 水準/Unicode 追加漢字面収録の漢字を使用しています。これらに対応していない OS/ブラウザでは正しく表示できない可能性があります。Windows では Vista 以降が標準で対応しています。
Unicode は、基本的な文字だけでも数万文字以上、規格上は百万文字近くの文字を収録する文字コード規格です。収録する「文字」にはそれぞれに独立した番号が与えられています。この値を「コード・ポイント(code point)」と呼びます。コード・ポイントは 0 ~ 10FFFF(16 進)までを取ります。
現実には、コード・ポイントという言葉は、収録されている文字に対応している整数値の意味で使われることも、ある整数値が指している文字そのものを指して使われることもあります。
コード・ポイントは U+XXXX ないし U+XXXXX という形で表記します(XXXX、XXXXX は 16 進表記)。たとえばラテン・アルファベット・大文字の ‘A’ は U+0041、ひらがなの「あ」は U+3042 といったように。
概念的には、このコード・ポイントの連続が、一般に「Unicode 文字列」と呼ばれているものになります。コード・ポイントは、Unicode 文字列を分割するときの最小単位です。
文字列 | अशोक ate 𩸽![1] | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
コード・ポイント | अ U+0905 |
श U+0936 |
ो U+094b |
क U+0915 |
U+0020 |
a U+0061 |
t U+0074 |
e U+0065 |
U+0020 |
𩸽 U+29E3D |
! U+0021 |
ただし、このコード・ポイントの連続を実際にコンピュータ上でどのようなビットで表現するかは実装によって異なってきます。
最大で 10FFFF(16 進)を取るコード・ポイントを実際にコンピュータで扱うことを考えてみます。コード・ポイントの連続を実際にコンピュータ上でどのようなビットで表現するかを、「符号化方式(encoding)」と言います。
ひとつのコード・ポイントを 32 ビットの整数値として保持するようにした場合は話は簡単です。すべてのコード・ポイントが 32 ビットに収まるので、このような実装の場合、Unicode 文字列は 32 ビットの整数値の連続となり、このシーケンスの長さがすなわち格納しているコード・ポイントの数になります。この符号化方式を UTF-32 と呼びます。UTF は “Unicode Transformation Format” の頭字語です。
実際には U+FFFF までのコード・ポイントで日常使われるほとんどの文字を表現できること、ひとつのコード・ポイントに 32 ビットの空間を割り当てるのはメモリ効率が悪いことなどの理由から、コード・ポイントを 16 ビット単位で符号化することもあります。この符号化方式は UTF-16 と呼ばれます。
UTF-16 では、U+FFFF までのコード・ポイントはそのまま 16 ビットの値で格納します。U+10000 以上のコード・ポイントは次のような計算に基づいて出されたふたつの 16 ビット値を組み合わせて表現します。この組み合わせ表現をサロゲート・ペアと呼びます。
例として U+29E3D を考えてみます。
ということで、UTF-16 では、U+29E3D を 0xD867 と 0xDE3D の 16 ビット値の組み合わせで表すことになります。Unicode のコード・ポイントでは 0xD800 から 0xDFFF までの範囲はこの UTF-16 のサロゲート・ペアのために予約されています。
UTF-16 はひとつのコード・ポイントをひとつまたはふたつの 16 ビット値で表現するということになります。このため、UTF-16 の16 ビット値の長さは、それが表現しているコード・ポイントの長さより大きくなる可能性があります。
文字列 | अशोक ate 𩸽! | 長さ | |||||||||||
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コード・ポイント | अ U+0905 |
श U+0936 |
ो U+094b |
क U+0915 |
U+0020 |
a U+0061 |
t U+0074 |
e U+0065 |
U+0020 |
𩸽 U+29E3D |
! U+0021 |
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UTF-32 | 0000 |
0000 |
0000 |
0000 |
0000 |
0000 |
0000 |
0000 |
0000 |
0002 |
0000 |
11 | |
UTF-16 | 0905 |
0936 |
094B |
0915 |
0020 |
0061 |
0074 |
0065 |
0020 |
D867 |
DE3D |
0021 |
12 |
UTF-16 で符号化している Unicode 文字列をコード・ポイント単位で処理する場合には、サロゲート・ペアの境界で文字列を分断しないように気をつけなければいけません。
すでに述べたように、コード・ポイントは Unicode に文字を収録する基本的な単位ですが、必ずしもそれがわれわれが普通に「文字」と考える単位と一致しているとは限りません。例にもあるデーヴァナーガリー文字の「शो」はヒンディー語ではこれで一文字とみなされていますが、コード・ポイントでは U+0936 U+094B ふたつの連続で表現されています。アイヌ語の表記に使う小書きの「プ」は小書きの「フ」に相当する U+31F7 (KATAKANA LETTER SMALL HU) に U+309A (COMBINING KATAKANA-HIRAGANA SEMI-VOICED SOUND MARK) を続けて表します(個人的には、「プ」を小書きにするのと、小書きの「フ」に半濁点を付けるのとは等価でないような気がしますが、とにかくそういうことになっています)。これらはいずれも、その言語の使用者からはひとつの文字であると考えられています。テキストエディタ上では、デリート・キーでの削除や、矢印キーでのキャレットの移動などで、これらをひとまとまりの文字として処理されることがユーザーに期待されます。
こうした、「利用者にとっての一文字」に相当するコード・ポイントのグループを「グラフィム・クラスタ(glapheme cluster)」といいます。なお、グラフィム・クラスタは 3 つ以上のコード・ポイントの連続になる場合もあります。
文字列 | अशोक ate 𩸽! | 長さ | |||||||||||
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コード・ポイント | अ U+0905 |
श U+0936 |
ो U+094b |
क U+0915 |
U+0020 |
a U+0061 |
t U+0074 |
e U+0065 |
U+0020 |
𩸽 U+29E3D |
! U+0021 |
11 | |
UTF-32 | 0000 |
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0002 |
0000 |
11 | |
UTF-16 | 0905 |
0936 |
094B |
0915 |
0020 |
0061 |
0074 |
0065 |
0020 |
D867 |
DE3D |
0021 |
12 |
グラフィム・クラスタ | अ | शो | क | a | t | e | 𩸽 | ! | 10 |
グラフィム・クラスタの括りは、言語によって異なる可能性があります。たとえば、チェコ語やスロバキア語では、‘ch’ がアルファベットのひとつの文字として使われています。これらの言語では c と h の間を分断しないのが望ましいことになります。
Unicode では、こうした言語固有の事情を除いたデフォルトのグラフィム・クラスタの区切り方の仕様として、“UAX #29: Unicode Text Segmentation” が提供されています。
グラフィム・クラスタで複数のコード・ポイントがまとめて扱われるのと、UTF-16 でのサロゲート・ペアを混同しないようにしてください。サロゲート・ペアへの配慮は文字列を UTF-16 で取り扱うとき固有の事情ですが、グラフィム・クラスタによるグルーピングは文字列を UTF-32 で扱っているプログラムにも対応が求められる概念です。
ユーザーがふつう「一文字」と言うときには、このグラフィム・クラスタの単位を指していることがほとんどです。技術的な話題のときに「一文字」と言った場合、それがコード・ポイントを指しているのかグラフィム・クラスタのことを言っているのかは、しばしば曖昧なことがあります。
(執筆中)
文字列 | अशोक ate 𩸽! | 長さ | |||||||||||
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コード・ポイント | अ U+0905 |
श U+0936 |
ो U+094b |
क U+0915 |
U+0020 |
a U+0061 |
t U+0074 |
e U+0065 |
U+0020 |
𩸽 U+29E3D |
! U+0021 |
11 | |
UTF-32 | 0000 |
0000 |
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0000 |
0000 |
0000 |
0000 |
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0000 |
0002 |
0000 |
11 | |
UTF-16 | 0905 |
0936 |
094B |
0915 |
0020 |
0061 |
0074 |
0065 |
0020 |
D867 |
DE3D |
0021 |
12 |
グラフィム・クラスタ | अ | शो | क | a | t | e | 𩸽 | ! | 10 | ||||
単語 | अशोक | ate | 𩸽 | ! | 6 | ||||||||
行分割境界 | अशोक | ate | 𩸽! | 3 | |||||||||
文 | अशोक ate 𩸽! | 1 |
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